『源氏物語』は西暦1001年の疫病流行期に新婚間もない夫を喪った未亡人紫式部によって、その虚脱感の中に書かれたと言われています。疫病の最中に書き起こされ、病に脅かされながら書き継がれた作品である『源氏物語』は常に死を前提に置く物語となりました。喪失感の文学です。
死を媒介にした時、愛はどのように維持できるのか。身代わりを求めてしまう心理、満たされない思いなど、死と病と老いという暗い要素とせめぎ合うように生きることの意味、愛の究極が輝きだす瞬間を『源氏物語』の中から12回にわたって読んでいきます。そのことで、源氏物語という大長編のもっとも本質的な部分を理解することができるでしょう。
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セット講座
第1回 疫病の中の『源氏物語』
動画 60分第2回 物語の始まりと桐壺更衣退出
動画 71分第3回 廃院の怪異と夕顔の女
動画 79分第4回 物の気出現と葵上の出産
動画 90分第5回 疫病の中の藤壺崩御
動画 86分第6回 不老不死の館
動画 105分
全セット ¥9,900円
講師
(国文学者・フェリス女学院大学名誉教授) 早稲田大学大学院卒業。上智大学教授、フェリス女学院大学教授を経て現職。『源氏物語』と『枕草子』を主な専門とし、幅広い観点から古典文学を捉える。NHK教育テレビの高校講座「古典への招待」で長年講師を務めた。著書『源氏物語 感覚の論理』『枕草子 表現の論理』(有精堂)、『源氏物語絵巻の謎を読み解く』(三谷邦明との共著・角川選書)、『天皇になれなかった皇子のものがたり』(新潮社・とんぼの本)、NHK 『100分de名著』 ブックス 紫式部 源氏物語 (NHK出版)ほか多数。
注意事項
※本講座は、ストリーム配信によるオンデマンド講座です。受講生の皆様は、購入時にご案内する動画URLにアクセスし、バスワードを入力してご視聴ください。
※パスワード等は、購入者に配布するPDF形式のファイルに記載します。
※資料もダウンロードできますので、配布するPDFファイルにてご確認ください。
※視聴期間は、2024年10月1日~2025年3月31日まで。
内容紹介
日本古典への招待『源氏物語』 第1回
第一回 疫病の中の『源氏物語』
源氏物語が本格的に書き始められたのは1001年長保三年あたりだと考えられています。その直前わずか四五年のうちに四度の疫病大流行があり、京都の人口の三分の一、高級官僚の半数が亡くなります。紫式部は、その疫病のさ中に物語を書き起こし、疫病の恐怖にうちまかされるのではなく、立ち向かい、その本質を明らかにするような「書かれた世界(物語)」を構築しています。歴史記録や和歌、日記などの資料をもとに、その背景を振り返ってみます。
日本古典への招待『源氏物語』 第2回
第二回 物語の始まりと桐壺更衣退出
源氏物語の始まりは、桐壺更衣の死による悲恋の破滅的な終了から語っています。このような不吉な物語の始まり方は珍しいようで、後の時代の人々は、源氏物語を仰ぎ見るように支持していましたが、この不吉な冒頭を嫌って、物語を読み始める時は、初音巻、紅葉賀巻などのめでたい巻から読み始めたようです。室町時代や江戸時代のことです。
それほどまでに衝撃的だった桐壺巻の不吉な語り始めはなぜ必要だったか考えていきましょう。
日本古典への招待『源氏物語』 第3回
第三回 廃院の怪異と夕顔の女
桐壺巻では、源氏物語が、身分への強いこだわりを持ち、その身分制度と愛が一致しない場合の葛藤と相克を問題とする作品だということを見てきました。それに続く帚木以下の物語は、光源氏がそれまで体験したことがなかった中の品階級の女との出会いでした。
夕顔との出会いはゆきずりの出会いです。「六条わたりの御忍び歩き」の道すがら、五条夕顔の家五条あたりにあった白い花が咲く粗末な家に心惹かれ、花を一枝所望したところから話は始まります。
日本古典への招待『源氏物語』 第4回
第四回 物の気出現と葵上の出産
今回は葵上の懐妊ともののけの出現、そして出産を終えた後の突然の死に至るドラマティックな物語を読んでいきましょう。
光源氏は22歳の大人、すでに大将という重要な役職についています。しかしそれまで彼を支持し、盤石の態勢で支えてきた桐壺帝は退位し、思うようにならない政治の鬱屈を抱え、光源氏は愛人たちに対しても十分な心遣いができなくなります。その結果、六条御息所は光源氏との縁を断つことを考え始めます。
日本古典への招待『源氏物語』 第5回
第五回 疫病の中の藤壺崩御
今回は、須磨・明石の沈淪を経て、藤壺所生の冷泉帝即位によって光源氏の政界復帰が叶えられた時期の物語を読んでいきます。病がちの朱雀院が位を皇太子冷泉に譲り、その後見人であった光源氏を大納言に復帰させたのです。
冷泉帝は表向き桐壺院の第十皇子ですが、光源氏と藤壺の秘密の子でしたから、これによって光源氏の権力は他の追随を許さないものに。
しかし冷泉帝が大人の年齢に達したころから藤壺の健康は損なわれていきます。
日本古典への招待『源氏物語』 第6回
第六回 不老不死の館
前回は藤壺が亡くなり、その結果、源氏物語が一つの曲がり角を迎えること、これからは光源氏一人でその罪の重さを背負っていかなければならないことが語られました。
そうした転機を迎えた光源氏が、新たに作り上げたのが六条院の世界です。
今回は「生ける仏の御国」とも譬えられた理想的世界、六条院はどのようなものだったのか。光源氏は、そのような世界を作り上げることで、何を成し遂げ、何を排除していったのかについて、考えていきましょう。